☆Tao☆疑似シナリオリプレイ(bP)
葡萄畑とグドン退治
夢と戯れし木漏れ日の舞踏姫・リシェル(a10304)




旅立つ皆の意気込みは……?
 山に入る少し手前に、ある小さな村がある。
 平和だが特に大きな産業があるわけでもなく、村人以外の人間がここを訪れることはあまりない。ましてや冒険者と呼ばれる人種であるなら、なおさらだ。
 それでもこの季節ともなれば、村の名物である葡萄を求める人々がこの村を訪れ、毎年それなりの賑やかさを見せる。
 ただ、今年はそうではなかった。辺りを見回しても葡萄狩りに来ているらしき人影は見当たらず、それどころか村人でさえ閉じこもってしまってほとんど見かけない。
 原因は、葡萄畑の近くに棲み付いたグドン。当然の事ながら、それらが葡萄畑に姿を現すようになってから急速に客足は遠のいて行ったと言う。
 それを退治しに9人の冒険者達が村に来たのだが……。


「みんなっ!グドンから葡萄畑を守ろうねっ!」
 まるで活気の感じられない村とは対照的に、いつになく気合を込めて元気に言っているのは深緑の癒し手・ユウコ(a04800)。村を助けることも勿論だが、どうやら謝礼としての葡萄を少なからず期待しているようだ。
「ああ、折角の秋の実りの葡萄が荒らされるのは放って置けないしね」
「うむ。グドン退治、頑張っていくでござるよ」
 頷いてそれに答えたのは黒炎の狗・カナト(a00398)と、蒼き鋼鉄覚醒武人・シオン(a12390)。
「20匹のグドン……さすがにまだ、私1人では無理……ね……」
「1人で全部することはないさ。だからこそ、俺達がパーティ組んでここに来てる。だろう?」
 歩きながら思いを馳せ、ひとり呟くエルフの邪竜導士・セレナ(a14611)に苦笑しながら言い聞かせるような口調で風来坊・アーオン(a04890)が答えた。
「でも、あの葡萄の素晴らしさが分かるグドンも居るのかぁ。ちょっと感心……」
 誰に対して言うでもなく、そう漏らしたのは駆け抜く春風・ダスティス(a12810)。葡萄に魅せられたというグドンに少々興味があるらしい。考え事をしているせいか、仲間達に置いていかれそうになっては慌てて早足で追いついている。
 十人十色。それぞれがそれぞれの思いを持ちつつ、一同は山の中へ向かっていった。


●荒れた畑で初遭遇
 華麗のお姫さま・ベルナデット(a05832)、輝きのふたつ尻尾・リモネアーデ(a05950)、硝子の刃の破片・サキ(a06791)、そしてカナトの4人は、先発隊として件の葡萄畑に向かっていた。夜の行動が主だったはずのグドンたちは、既に昼間でも畑に来る様になっているという話を聞いていたからだ。
「とはいうものの……」
「グドン、こっちには来てないのかな」
 荒れた葡萄畑を見回しながら、カナトとリモネアーデがそれぞれに呟く。
「ああ、今は、みんな棲家の方にいるのかも知れないな。それにしても……酷いな、これは」
 畑を眺めながら顔をしかめたのはサキ。彼の言うとおり、葡萄畑の荒れ様は4人が想像していた以上に酷かった。
 実りの季節を迎えて葡萄を豊かに実らせているはずの畑の一部は、グドンたちによって食い散らかされて今は見る影もない。枝ごと持っていかれている木などは、今年だけでなく来年の収穫も期待できなさそうだ。
「これは、一刻も早くグドンを退治せねばな。見た所、現状では畑にグドンはいないようだが……ん?」
 何かに気付いた様子のベルナデット。彼女の向ける視線の先に目をやると、やや離れたところで動いている何者かの影がふたつ。丁度葡萄を取りに来たらしい。グドンだ。
「現れたね。よし。それじゃひとつ、誘い出しと行きますか」
 初めは戦うそぶりを見せていたグドン2匹だが、カナトの巧みな誘導によって本隊が待機している場所まで連れてこられて全員からの袋叩きにあう事になった。


●罠作り、そして、突入

 グドンの住処である洞窟を探し出すのは容易だった。先発隊のうち、サキが洞窟内部の偵察を行い、残りの3人がその入り口を見張っている間に本隊のメンバーは罠の製作にかかる。
「では、拙者はここに落とし穴を掘るでござるよ」
 言いつつも、既にものすごいスピードでで穴を掘り始めているシオン。本当なら50メートルもの深さを掘りたかった様だが、さすがに他のメンバーに止められ少しだけ残念そうな顔をする。
「ええっと、このロープを使って……分かんなくなっちゃった……みんな、頑張ってね?」
 罠を作ろうと必死に試行錯誤をしていたユウコは、途中で挫折してしまったらしい。自分で罠を作るのは諦め、器用に罠を張っているほかの人間を応援することにしたようだ。
「ここに縄を張っておけばグドン達が……あぁ、楽しいっ♪」
 こういった悪戯ごとが大好きなのか、麻縄を使って嬉々としながら罠を張っているダスティス。豊かな雑学の知識を生かして簡単ながらも効率的な罠を次々と作り出していく。

 本隊が罠を作り終えた頃。
「グドンたちは、やはりまだ20匹ぐらいいるみたいだ。ほとんどが武器を持ってて、弓を持ってるのは5〜6匹だな。霊査どおり、祈祷師グドンも1匹いる」
 先発隊も合流し、『ハイドインシャドウ』で洞窟の内部を偵察をしていたサキが、内部の情報を全員に伝える。
「みんな、怪我だけは気をつけてね。怪我したら……これ、塗ってあげるから♪」
「……怪我だけは、絶対にしないようにしないとね……」
 笑顔で【つぶつぶ塩入りお薬】を手にするユウコ。それを見て、言葉を漏らしたリモネアーデを初め否応でも全員の士気は高まる。
「……さて、それじゃ、行くか」
 アーオンの言葉と共に、彼ら一斉に洞窟へと突入を開始した。

 冒険者達の襲来は、グドンたちにとって全くの予想外の出来事となった。あるものは慌てて弓を持ってこちらへと弓を乱射しようとするが、カナトが予め準備していた『矢返しの剣風奥義』によって全て逸らされていく。
 祈祷師グドンの声で一時的に統制の取れた動きを見せようとするものの、既にベルナデットの『エンブレムシャワー奥義』とカナトの『ニードルスピア奥義』によって傷ついたグドンたちはリモネアーデやシオンの、そして後方からのダスティスの攻撃で次々と倒れて行く。
「一匹たりとも逃しはしないよっ!」
カナトが【呪装鉄鎖くろがね】で逃げようとしているグドンの足を絡ませ『スキュラフレイム奥義』で焼き尽くし……。
「逃がすかぁっ!!」
運よくそれらの攻撃を避けて逃れようとしていたグドンたちも、あらかじめ張っておいた罠で足止めを受けている。その間に後方からのサキの『カラミティエッジ』で止めを刺されていった。

「ふふ…逃げられると思っているの?」
 傷つき倒れながらも這って逃げようとするグドンに気付いたセレナは、表情を変えることなく、それに止めを刺しに向かう。
 剣を高く振り上げたその時。倒れていたグドンが最期の力を振りしぼり、手に持っていたナイフをセレナに向かって突き立てようと腕を伸ばした。
「っっ!」
 だがそのナイフは、セレナに届く前に乾いた音を立てて地面に落ちる。リモネアーデが間に入り、彼女のレイピアがグドンの持つナイフを見事に弾いていた。
「セレナ、深追いは危険だよ。無理をしなくても、出来る範囲でいいから、みんなの援護をお願い。ね?」
 グドンに一撃を与えて、リモネアーデは振り向くことなく言い放つ。間もなく彼女はすぐに次のグドンに向かっていった。
「あ……ありがとうございます……」
 その言葉は彼女に届いていたかどうか。既にグドンと剣を交えているリモネアーデを見ると、セレナは何故か照れながらも、仲間達の援護へと向かった。

「ダスティス、右側のグドンへ。向こうでリーデの援護を……きゃ??」
 前線の人間に指示を出しつつ回復を行っていらユウコは、自分の視界を遮ったものが何か、一瞬分からなかった。が、次の瞬間には、それが味方の間をすり抜けてきたグドンであることに気付き、その華奢な身体を硬く強張らせる。
 攻撃を受ける覚悟をしていたユウコだが、その一撃が浴びせられることはなかった。しんがりを護っていたアーオンが、グドンの一撃を防いだのだ。
「ユウコに手を出すな!俺が相手だ!」
 言うと同時に、全身全霊を込めた『電刃衝』がグドンに浴びせられる。反撃がする余裕すらなく、攻撃を受けたそれは崩れ落ちた。
「大丈夫だったか、ユウコ?」
「うん、平気。……アーオン、ありがと」
 心配げなアーオンの言葉に、少しだけ恥ずかしそうにユウコが答えた。

 もともと20匹程度のグドンでは、9人もの冒険者の敵にはならない。初めは彼らの倍以上の数だったはずのグドンは1匹2匹と確実に数を減らし、そして……。
「これで最後……覚悟しなさいっ!」
 リモネアーデが渾身の一撃を放ち、最後に残った祈祷師グドンに一閃を放つ。逃げることすら叶わず、祈祷師グドンはそのまま動かないただの物体になった。
「森の奥で静かに暮していれば、こんな事をしないで済んだんだが……」
 亡骸になったグドンたちを見ながら一息つき、額の汗をぬぐっていたアーオンが呟く。
「……奥の方も探してきたけど、もうグドンはいないよ。これで全部だ」
 残ったグドンがいないかを探していたサキも戻って来る。こうして、冒険者達への被害はほとんどなく、グドン退治が完了した。


●お昼ごはんとカレーパン
「思っていたよりも、随分と早く片が付いてしまいましたね」
 グドンを退治し、村へと引き返す道中。セレナがポツリと漏らした。その言葉に、わずかながら残念そうな色が混じっているのは、気のせいだろうか。
「そうでござるな。もっと時間がかかるものだと思っていたでござるよ」
 それに気付いてか気付かずか、シオンが返事を返す。こちらはうって変わって退治が無事に済んで一安心、といった表情。
 確かに、時間は昼を少し回ったところである。グドンの数が少なかったとは言え、午前中に目的地に着いてからわずか数時間で目的を完了してしまった事になる。
「……ちょっと、お腹すいたね」
 それは、誰の言葉だったか。ともあれ、それはその場にいた全員の気持ちでもあった。自然と、全員の視線が『Tao』のお料理番ことサキに集中する。
「……一応、全員分の弁当も作って持ってきてあるけど」
 その視線にたじろぎながらもサキが答えると、「お昼にしよう」と全員の意見が一致する。森の中の、少しだが開けている広場。丁度いい場所を見つけ、一行は昼食を取る事にした。
「サキ殿の弁当だけでは足りぬ様だな。そんな事もあろうかと、私もカレーパン(ロリエン食糧管理委員会製)を人数分、持って来ている。皆で食べて頂けると幸いだ」
 退治を終えた安心感からか、彼らの食欲は思いのほか旺盛だった。その様子を見ながら、ベルナデットはどこから取り出したのか、用意していたカレーパンをそれぞれに手渡している。
「……イヒ! それはね、ひとつだけアタリがあって、当たると口から火を吐くことが出来るんだよ! 誰が当たるか、楽しみだね!」
 皆が食べようとした瞬間、発せられた言葉に全員が一瞬動きを止めるものの、既に諦めているのか、次々とそれを口へと運んで行く。そして。
「イヒ!」
 運がいいのか悪いのか。アタリを引いたのは、カレーパンを配っていたベルナデット本人だった。カレーパンを辛いと思わない彼女は、残念なことに火は吹けなかったらしい。


●さあ、葡萄狩り

 冒険者の一同がグドン退治を報告した後。
 グドンたちに一部を荒らされているとは言え、10人程の人数が葡萄狩りをするのには十分すぎる広さがある。せめてものお礼に、畑で葡萄狩りを楽しんで行って欲しい。
 村の大切な財産が守られて余程嬉しいのだろう。笑顔の絶えない村長のその言葉に、一同は迷う事なく頷き。そして。

「うーん……なんだかこのぶどうは格別おいしい気がするなあ。あまいのが体のすみずみまで行き渡るカンジ」
 摘み取った葡萄を一粒口に含んでリモネアーデが嬉しそうな笑みをこぼすと、
「うん、本当に美味し〜♪」
 同じように微笑んでいるのは、ユウコ。他の連中に比べて葡萄を食べるスピードがやたら速い気がするが、彼女の持つ雰囲気のせいか何故かそれに気付いている者はいない。
「ユウコユウコ、これ、飲んでみなよっ♪ 美味しいよ〜?」
 既に十分葡萄を満喫し終えたダスティスは、嬉しそうにそんなユウコにワインを勧めている。
 その隣では、セレナも一緒に葡萄を摘んでいた。葡萄狩りには参加せず、村の酒場でワインを飲もうとしていた所をユウコに誘われたのだが、意外とこの状況を楽しんでいる様子。
「ワイン作りは専門外だけど、持って帰ったらフルーツポンチなんかを作りたいな。でも、干し葡萄も捨てがたいし……」
 サキは言いつつ、真面目な顔で葡萄の品定めをしている。料理道具はさすがに持って来れなかったが、持ち帰った後の使い道を色々と思案しているようだ。
「ワインは飲めないから……ジュースにして持って帰って良いか?」
 一際豪快に葡萄を食べながら、案内に着いて来た村人に尋ねているのはアーオン。村人からOKが貰えると早速、食べるもの用とは別にジュース用の葡萄を集め始めた。

 カナトは畑のすぐ側に設置されているテーブルで、村のもうひとつの名産品であるワインを味わっていた。とは言っても今年のものはさすがにまだ出来上がっておらず、飲んでいるのは去年のものだ。見事なルビー色に染まった液体を口に運び、満足そうな微笑を浮かべている。
「私も、一緒に頂いていいでしょうか?」
「もちろん。どうぞどうぞ」
 何時に間にかセレナがテーブルに来ていたのに気付くと、カナトは椅子から立ち上がり、向かいにある椅子を引いて彼女を座らせた。そして、手馴れた仕草でグラスにワインを注ぎ始める。
「……これ、美味しいですね」
「だろ? さすがに名産品って言うだけの事はあるよね」
 セレナの驚いた様子に、カナトは満足げに答えた。密かに自分の土産用のボトルはキープしている辺りはさすがの一言。
「拙者も、それを飲ませてもらっていいでござるか?」
 セレナに続いて現れたのはシオン。しっかり自分用の椅子も持ってきている。カナトは同じようにシオンのグラスにワインを注ぎつつ、
「シオンってまだ19だっけ……じゃ、少しだけ。でもユウコには内緒な?」
「ユウコ殿は、怒ると怖いでござるからな……もちろん内緒でござる」
 2人は声を潜めて呟き、悪戯っぽく笑い合った。

「ご馳走様でした♪ 美味しかったね。また、来年も皆で一緒に来ようね〜♪」
 葡萄狩りを満喫し、それぞれでお土産も貰い大満足で村を後にする冒険者達。グドンも退治され、ここを訪れる人達も戻ってくるだろう。ユウコが帰り際に葡萄畑に放った『フォーチューンフィールド』は、来年の豊かな実りを助けてくれるかも知れない。
 また来年、この村に遊びに来て葡萄狩りを楽しめたら。それは、ここに来ていた全員の気持ちでもあった。

【END】





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おまけ--------

●出遅れた2人
「……出遅れてしまった」
「ん? アプレさん、どうしたの?」
 書き置きらしき紙を持ち、がっくりと肩を落している奈辺の金盞花・アプレ(a09747)を見つけ、風と戯れし舞踏家・リシェル(a10304)は不思議そうに尋ねた。
「いや、ユウコ達が葡萄狩りに行っているらしくて。出来たら一緒に行きたかったんだが……」
 言いつつ、アプレは書き置きをリシェルにも見せる。そこには深緑の癒し手・ユウコ(a04800)の文字で「葡萄狩りに行って来るね〜♪」と書かれていた。
 正確に言えばグドン退治に行っているのだが、何処かで情報が食い違っているようだ。
「そうなんだ? ボクも行ってみたいな……ねね、アプレさん、一緒に行かない?」
 言いながらアプレの顔を覗き込むリシェル。その言葉にしばしの間悩んだ後、
「……うん、そうだな。ユウコたちに追いつければいいんだけど」
 彼女は微笑みながらそう答えた。


●彷徨う2人、森の中
 グドン退治に出かけたユウコ達の後を追い、アプレとリシェルの2人は、葡萄の名産地と名の高いとある村を目指して歩いていた。
 はずなのだが。
「おかしいなあ……この道で合ってるはずなんだけど」
「……リシェル。しばらく前から思っていたのだけど。これってもしかして」
「うん、多分。ごめん」
 冷や汗を一筋流しながら問うアプレに、リシェルは気まずそうに頷いた。村へと向かう街道沿いを歩いていたはずの2人は、どこをどう間違えたのか、何故か山の中にいたのだ。迷った、とも言うかも知れない。
「ボク達、いま何処を歩いてるんだろ?」
「いや、私に聞かれてもなあ……」
 地図を片手に不思議そうに呟くリシェルに、アプレは苦笑する事ぐらいしか出来ない。ともあれ元の道に戻ろうという結論に落ち着いた2人は、今まで歩いてきたと思われる方向に向かって歩いていく。

 だが、そのまま戻れるような方向感覚の持ち主なら、初めから迷うことはない。やがて2人は、山中にある小さな洞窟に遭遇した。中に入ってみると、そこにあったのは真新しい戦闘の跡と大量のグドンの亡骸。
「これは……何か、あったんだろうか?」
「これ、戦闘があったのって、つい最近だよね。というよりも、ホントについさっき、ってぐらい……っ!!」
 2人で洞窟の中を調べていた時、リシェルが何者かの気配に気付く。慌ててそちらを振り向くと……。
「アプレ? それに、リシェルも」
 そこから聞こえてきたのは、2人のよく知った声……駆け抜く春風・ダスティス(a12810)のものだった。

●今度こそ、葡萄狩り
「迷ってたはずが、ちゃんと目的地に向かってたのね」
 ダスティスに事情を聞いた後、感心しているとも、呆れているとも取れる表情でアプレが呟いた。
 2人は『☆Tao☆』に戻ろうとしていたにも関わらず、当初の目的地だった村のすぐ側まで来ていたのだ。しかも、ユウコ達がこの洞窟でグドンを退治し終えたのは、つい数時間前だという。
「ダスティスはどうして戻ってきたんだ? なにか忘れ物でもしたの?」
「いや、ちょっとね」
 アプレの問い掛けに小さく笑いながら言うダスティスは、持ってきていたひと房の葡萄を2人に見せる。
「彼らのやっていた事が正しいなんて言う訳じゃないけどさ。もしかしたら自分と同じように、この味に魅せられてたかも知れない、彼に」
 言いつつ、倒れたまま動かなくなった祈祷師グドンの亡骸まで行くと、その葡萄を側に供えた。
「……さてと。折角ここまできたんだし。2人も葡萄狩り、したいよね?」
 しばしの沈黙の後。振り返ったダスティスがウィンクをしながら尋ねると、2人は嬉しそうに頷き、早速彼に葡萄畑までの道案内を急かすのだった。

【終わり】