☆Tao☆疑似シナリオリプレイ(4)

☆Tao☆の一番暑い夏休み
第二話:牢獄の中のメリシュランヅ
性欲をもてあます・メリシュランヅ(a16460)



☆Tao☆の一番熱い夏休み
第二話:牢獄の中のメリシュランヅ(ロ)

 照りつける太陽。熱気だけで支配されるかのような毎日が続くランドアース。だが、その日は何時もと違って空には暗雲が立ち込め、肌に当たる風は冷たさすら感じるほどである。
 大樹の町フレイハルトの東、ドリアッドたちの森の近く。竜脈坑道や☆Tao☆旅団のある場所からやや南南東に行った場所にある二つの街がある。北方向に過去にドリアッドとの交流が深く、多種族が幸せに暮らしていたクドモスの街。そして、新たに作られた南の街アルビナーク。二つの街は反乱と言う戦いの歴史によって築かれている。
 事の発端は、ある石の存在。紅に光る真円の石。それが全ての始まりだった。それがその街にどの様にしてもたらされたかは今では多くの話で埋もれ、真実はようとして知れない。だが、反乱によってほぼ壊滅し住民もほとんどいなくなったクドモスにいる桜ドリアッドの霊査士・ダストスは知っていた。知りたくなくても見えてしまう。その己の霊査と言う力で、一つ一つの物から勝手に語りかけてくるかのように。
 崩れそうな一つのあばら家に美しい女性が横たわっている。良く見ればその緑色に光る髪の毛の先に桜が咲いている事から、ドリアッドである事がわかる。その女性はダストスの姉である。美しい女性は今、まさに病の床についているのだ。病の種類は不明であり、治療方法さえ明らかになっていない奇病を患っている。ダストスにはその姉をフレイハルトの病院に連れていけても、精密な検査をさせる資金がなかった。霊査士であるが、手に入れられる資金ではまったく足りないのだ。またしても、自分の無力さに力なく項垂れる。己の力ゆえに、戦えない。自らの力で人を救えない。ダストスは姉の手を握り、涙を流している。
「だ・・・・すとす・・・・・・。なか・・・・・・・ないで。わた・・・しの事は、良いから・・・・・・幸せに、なるのですよ・・・・・・・・。」
 姉の声はもう美しい音色では響かない。声も続かない。姉はそれだけ言うと、意識を失った。ダストスには時間が無いのだ。いくらでも良い。姉を救える力が欲しい。
 項垂れるダストスの後ろには一人の少女が立っている。擬似NPC・フラジピルだった。ダストスの様子を見て大量の涙を流している。フラジピルとダストスの付き合いは長い。アルビナークで知り合ってからお互いの境遇からか、共に行動することが多かった。フラジピルも自分の問題を抱えつつもダストスの力になれないかと霊査の仕事を探して回ったりしていた。そして、少女は自分の拳を痛いほど握り締めながら伝えるのだ。
「ダストスお兄ちゃん。霊査のお仕事が入ったよ。もしかしたら、これでお姉ちゃんの病気も・・・・・。」
 それ以上は続かない。新しく出来た暖かな人たちとの繋がりがそれで終ってしまうかもしれないから。☆Tao☆旅団の皆の顔を思い浮かべた。フラジピルは一般人である。自分と同じような年で冒険者になった天使見習い・ミュシャの姿を思い浮かべた。自分に力があれば。もっと、力が。フラジピルもダストスも、その場からしばらく動けなかった。
 二人はそして、☆Tao☆旅団の門を叩く。自らの道の為に。己の力が無いから。人を利用するしかないのか。過去に起こったクドモスでの事件のように。


 ドリアッドやストライダーそしてヒトやエルフの異種族が同じ街に住んでいる。互いの種族が違えども、互いの存在を認め交流
し、暖かで争いも無い街。クドモス。そこは北にあるドリアッドの森に近く、交流も深かった。
 冒険者でもあり、多くの旅をしてきたクドモス町長息子であり、次期町長と期待も高い成年流浪の旅人・ウェンヅレイが一つの石を街にもたらした事から全ては始まる。
「おや、ウェンさんお帰り!随分街を空けていたけどまた冒険かい?今度は何処へ行ってたんだい?」
 ウェンヅレイの幼馴染でもある青年風の放浪者・アーポンであった。アーポン自身も冒険者であり、ウェンヅレイのような冒険に憧れている事から街を空ける事が多い。が、まだウェンヅレイにはかなわないと感じている。元気良く迎えた久しぶりに会う幼馴染で親友のウェンヅレイの様子は何時もと違った。
 ウェンヅレイは微笑んでいる。右手には紅く光る石が握られている。それを見て、見入っている。アーポンの存在など、そこには無いかのように。アーポンはその石を見た。瞬間。世界が暗転した。ぐるんと回ったか。自分の存在が希薄に感じるほどに石の存在が大きく感じる。絶対的な存在を感じる。自らは紙切れのような存在で、石によって生きている。石によって喜びを感じる。アーポンの中にある今まで築き上げてきた価値観なんていらなかった。それさえあれば良いと感じた。紅い石に命すら捧げた所で喜びすら覚えるほどに。
「そ、その石。お、俺にも触らせてくれないか?」
 言うやウェンヅレイの肩を掴んだ。しかし、すぐに吹き飛ぶような感覚に襲われる。ウェンヅレイは武道家である。体術に優れ、体一つでいくつもの戦いを生き抜いてきた。アーポンはそれすら忘れていた。地面にしたたかに体を打ち付けて先ほどまでの心の高ぶりが嘘のように静まっている。前方にウェンヅレイの姿もない。
「・・・・・・・。あれは、あれは人の触れて良い物じゃない!ウェンを止めなきゃ。」
 アーポンはその後を追った。何処へ行くかは解らなかったが、とにかく町長、ウェンヅレイの父親の家に向った。

 クドモス町長・クリフは息子の帰りと共に、大いなる存在の帰還に喜んだ。歓喜。クリフは自らの息子を崇拝するようにひざまづく。
 世界は紅い。血のように。争いを好む。戦うことが、喜びである。殺す事が使命である。奪う事が生きがいである。裏切る事が日常である。お前が、世界を手に入れる。お前が世界を手に入れる。紅い石を肌身離さず持て。世界は紅い。血のように。欲するは生き血。ここには良い血が沢山ある。奪え!殺せ!石を更に紅く染めるように!
 ウェンヅレイの心はその日、死んだのだろう。心優しく町民に好かれており、父親の誇りであった。そんなウェンヅレイは父を殺した。躊躇いなど無かった。そして、右手に持つ石は嬉しそうに紅く光った。ウェンヅレイはその光に全てを捧げる。
 次の日から町民に多くの決まりが出来た。初めは誰もが目を疑った。ウェンヅレイが街の中央で声も高らかに宣言したのだ。今までの税を大幅にあげ、街の女性で未婚で穢れの無い16歳以上のドリアッドとエルフを捧げる事。町民の持つ全ての財産を寄付する事。ウェンヅレイ新町長に絶対の服従をする事。なさない場合は死。死あるのみ。
 クドモスの酒場で仲間を集めてアーポンたちは話し合っていた。新しい決まりと、ウェンヅレイの変貌について。
「あいつは、冒険で変な石を持って帰ってきたんだ。それがあいつを変えちまった!あれさえどうにかすればいいんだ。あれを奪って潰すなり壊すなりすれば!ウェンは元のウェンに戻る!きっと。」
 強い酒を飲みながら荒れた調子でアーポンが吐き捨てるように言った。あの後町長の家まで行ったはいいが、まったく持って相手にすらされず、その上に追い出されすらして気分を害しているのだ。今まで絶対そんな事は無かったのに。
「アーポン、飲みすぎですよ?ダストスが落ち着かせようにも怖いみたい。ふふ。」
 声は透き通るように綺麗だ。緑の髪は皆を魅了するかのように輝き、その先に咲く桜はどのドリアッドより可憐。最近アーポンやウェンヅレイに触発され、自ら霊査士となったダストスの姉美しき桜・プルーフだ。酒場の一人娘であり、看板娘。さらにはクドモス一の美人として有名だった。アーポンは淡い恋心もあり、その酒場には何時も通っていた。透き通るような声は心を癒し、疲れた体を解すかのように。
「べ、別に怖いと思ってはいないよ。姉さん。」
 アーポンの席から少し離れた場所でダストスはプルーフに言った。プルーフはそんなダストスを愛おしい目で見つめている。兄弟は仲が良く、評判も高かった。ダストス自身は自分が姉の存在の大きさに負けたくない年頃。とは言え、ドリアッドは精神の成熟無しに歳を取らない不死の種族。ダストスやアーポンとウェンヅレイは皆同じ歳なのだが、ダストスはどうにも姉の存在からか幼く見られることが多かった。それも手伝ってるのだろう。強がってしまうのだ。だが、それが彼をその位置に置く理由になっている事に気づくにはまだ時間が必要なようだ。
 アーポンはプルーフの声に心が落ち着くが、はなはだ穏やかではない。親友の変貌に今日は驚かされてばかりいて、何一つ良い案が浮かばない。酒場に集まった町民たちも同じ様に言葉少ない。
「ダストスは霊査士だよな。何かわからなかったかい?」
 町民の一人が言い出した。なり立てとは言え霊査士なら何か感じ取ったかもと思ったのだろう。しかし、当のダストス本人にはまったく何も感じなかった。やはりその物に触れなければ何もわからないようだ。自分の能力の中途半端さに唇を噛んだ。
「何か、嫌な力を感じたんだ。あの石を見た瞬間にだ。あんな感覚初めてだった。今だって覚えている。けど、恐ろしくって思い出したくない。また同じ感情が爆発しそうになる。」
 アーポンは自分の胸に手を当てて焼けるような想いを思い出しそうになるのを抑えながら言った。
 すると一人の老婆が語りだした。ランドアースの歴史に詳しく、若かりし頃希望のグリモアのグリモアガードだった歴史の生き証人・システィアだ。
「七色の石がある。紅い石は炎を記す。ヒトノソリンを司る。蒼い石は安らぎを記す。ストライダーを司る。黄の石は大地を記す。ヒトを司る。翠の石は森を記す。ドリアッドを司る。紫の石は生命を記す。エルフを司る。闇の石は死を記す。リザードマンを司る。光の石は創造を記す。エンジェルを司る。七つの石を一つにまとめ、虹の橋を渡ろう。その先には大いなる世界がある。」
 歌うようにシスティアが語った。全員が聞いた事の無い歌だ。この世界には他にも種族がいるが、なぜ七つなのだろうか。そして、虹の橋。今回の事件にかかわりがあるのだろうか。システィアは皆の反応にちょっと微笑みながら更に続けた。
「石には、力がそれぞれある。それぞれの色に見合った力がな。この歌はエンジェルからもたらされた。最果て山脈の頂にあるエンジェルの国からやってきた少女よりもたらされた。彼女の胸には光る石があった。」
「ば、婆さんもったいぶらずに教えてくれ!あの石に対抗する手段、石の力を封じ、あいつを助ける方法を!」
 アーポンは大きな声で言う。なだめるようにその肩をプルーフがそっと叩く。
「慌てるでない。話は最後まで聞くものじゃ。砂漠の国ワイルドファイアにあると言われている封印されし石版。しかし、封印せしはグレートツイスターと呼ばれる竜巻の上に浮かぶ浮島にあると言う。そしてそこには魔物が潜み、それを守護しているという。その石版に石を収めよ。さすれば力をまとめる第一歩。」
 アーポンは酔った体を立ち上がらせた。その体を椅子に押し付けて隣に座ってた男が立ち上がった。名を、鎖竜・テュッティーと言う。その父はこの集まりの代表格でもあり、町長の信頼を息子の次に受けていた人物でもある。テュッティーはその息子だ。アーポンたちよりも年齢が上であり、皆の兄貴ぶんと言っても過言でもない。
「メンバーを集めよう。親父、構わないよな?」
 テュッティーの父親は奥の席で無言で頷いた。息子に託すしかなかった。今は町長の決めた取り決めにどの様にして逆らい、街のエルフやドリアッドの娘を守るかで頭がいっぱいだったのだ。
「よし。じゃあ、アーポンは決定として、他はいるか?」
 その声と共に数人の冒険者が手を上げる。その場所に居合わせた流れの冒険者もいる。グレートツイスターという、秘境に足を踏み入れる事が楽しみなのだろうか、街の事件などよそに喜んですらいる。
「なら、話は早い。明日出発しよう!」
「テュッティーさん、良いのですか?奥さんの出産も近いでしょうに。」
 プルーフがそう言う。しかし、行く決心に揺らぎはないようだ。

 一月。その時の流れはグレートツイスターに行っていた冒険者たちにとってはあっという間だった。が、クドモスはそうではなかった。冒険に赴いた彼らが見たものは、荒廃した町並み。人気の無い廃墟の並ぶ街。
「お、遅かったのか!」
 アーポンは真っ先に酒場のある場所へ向う。が、その場所には何もなかった。腐った木が一本落ちている。アーポンはその場に崩れるように座り込んだ。その後ろでテュッティーが石版を手に、同じ様に途方に暮れている。
 すると、一人の少女が現れた。どこか、テュッティーは母の面影をその少女に見る。
「君は?」
 少女は何も言わずにテュッティーの手を引き、街の外へ。さらに南へしばらく走った場所に、いくつかの民居が建っていた。少女は躊躇せずにその扉を開け放つ。すると、中から見覚えのある顔が見えた。それは美しさがかわらないプルーフだったのだ。
 その日、無事帰還した冒険者たちを労うと共に、反乱組織アルビナークの結成。そしてその大きな鍵となる石版の到着に皆喜んでいた。
 テュッティーの父親であり、反乱組織のリーダーにもなったアルビナークの導き手・ルーカスが全員に改めて今までの経緯を話した。
 町長息子の乱心から町民は耐えられず、街を捨てその力に反旗を翻して反乱組織を作り上げた。町長息子の所業は尋常ではなかった。逆らうものはその手で殺し、逆らった家族を焼き討ちにし、財産を奪った。さらには紅い石の力か。ウェンヅレイはアンデットを自らの僕として使い、町民を襲ったのだ。町民の中で若く未婚のドリアッドやエルフを攫い、その家族を皆殺しにしたのだと言う。アンデットの力に抗うにも、人手や冒険者がたらず、逃げるしかなかったのだ。
 若い街の男たちはすぐに希望のグリモアへ誓いの儀式を行い、冒険者として戦う決意をし、テュッティーたちが帰ってくるのを準備しながら待っていたのだ。
 テュッティーを迎えた少女は、テュッティーの娘。アップレ。テュッティーの奥さんでもある女性が笑顔で彼を抱き締めて帰りを喜び合った。

 翌日。決起した反乱組織アルビナークの青年たちは武器を手に、クドモス街に立っていた。こんな事になると、誰が思っただろうか。今までとても平和で美しい街が、まるで魔物の棲む場所のように。そして、町民たちが笑顔で通った道は、アンデットたちが徘徊するようになっている。
「くっ・・・・・・・。」
 唇を噛み締め、アーポンが悔しそうに言葉も無く武器を構える。目には涙が浮かんでいる。テュッティーはその肩を掴み、頷いた。今日で終らそう。それが彼らの意思だった。
「皆!我らの戦う時が来た!邪悪なる力に身を心を奪われたウェンヅレイはかつての彼ではない!すでに邪悪な心に染まり、ヒトの姿を捨てた狂人だ!今こそ美しい街を取り返す時!立て!剣を持て!かつて暮らした街をこのままアンデットの棲む街にしてたまるか!突撃!!!」
 ルーカスが言うと、全員が立ち上がり、武器を天に掲げ、咆哮と共に街へと。

 壮絶な。愚かしくも、美しい戦いだったと、ダストスは霊査出来た。戦いに参加すると気絶してしまう彼にとっては何も出来ない。その、事実があった事だけがわかる。
 アルビナークの人たちは殆ど壊滅状態だった。数人の冒険者とルーカス、テュッティーやアーポン。彼らだけが最後に立っていたのだと。ヒトの姿を失い、冒険者の誓いを捨てたウェンヅレイは魔物と化していた。見るも無残な姿に形を変え、その戦力は冒険者の想像を超えたものだった。だが、彼らは勝利した。その代償は遥かに大きい。が、戦いは終ったのだ。
 石版に収められた紅い石には以前の邪悪な力が見受けられない。石版を手にしたルーカスにもまったく変化は見られなかった。
 戦いが終った後、アンデットや戦い果てた者の葬儀がすんだ後、誰もクドモスに戻る者はいなかった。新たなる指導者ルーカスの元、アルビナークと名づけられたその街で、暮らす事となる。アルビナーク。その名を、希望。グリモアと同じ意味を持つ。しかし、その街に、以前と同じ過ちが繰り返される事になる。
 ルーカスはその五年後に謎の死をとげ、テュッティーが変わって町長へ就任する。その胸には石版から外された紅く光る真円の石が。彼は力を求めた。ありとあらゆる力を欲した。そのためなら手段を問わなかった。石にはもうヒトを魅了する力はなくなったはずだった。しかし、その石には一滴の血。それは、ルーカスの血。ダストスは見た。彼の上着に返り血がついているのを。歴史は繰り返す。それからさらに月日が流れ、テュッティーには第二子が誕生していた。元気で素直な少女の名を・・・・・・・・。


「プルーフさんの容態はどうなんだ?ダストス。」
 年齢を重ね、髭を生やしタバコを吸うようになったアーポンだ。以前の思い出に浸っていたダストスにはちょっとばかり残念でならない。一方ダストスは、以前より随分たくましくなっていた。まだちょっと退け腰なのは相変わらずだが、その目は成熟した男のそれである。
「駄目さ。どんどん悪くなる一方で。俺はまたどうする事も出来ない。」
 項垂れるダストス。その場にいる他の者もプルーフの容態を心配しているようだ。その全員がクドモスの戦いを生き抜いた戦士たちの子供たちでもある。子供と言っても、すでに成人を迎えるような青年たちだが。
 なぜ、その場に集まっているのか。また、戦いが行われるからでもある。これから行われる戦いに備えて、皆戦う準備は整っているようだ。しかし、以前とは違い、彼らは冒険者ではない。ただの一般人。冒険者の力に触れればどうなるかは知っての事だ。
「ダストス兄、やつらに頼るしかないのかい?別の方法はないのかい?」
 言ったのは、美しい女性だ。口調は男っぽいが、その節々には優しさを含んでいる。自らの父親の行為に疑問を持ち、祖父の殺人や悪行を正したくて参加したテュッティー町長の長女。時を忘れし医師・アップレである。成長して女性としても成熟したアップレは以前のプルーフに似たところがある。それゆえにか、集まった反乱組織の青年たちの憧れである。
 ダストスは唇を噛み締めながら自分の無力さに打ちのめされ続けている。
「ダストス兄は良くやってくれてる。これまでに私たちをちゃんと導いてくれたじゃないか。」
「私には、力などないよ。アップレ。また人の信頼を裏切り、利用してしまった。私は卑怯者だ。」
 ☆Tao☆の面々の顔が浮かぶ。自分があんな素敵な人たちを利用している事に罪悪感を感じて、その罪の重さに心をひどく痛めている。
「だが、そのおかげもあって戦う戦力が整ったんだ。お前の選択は間違いない。」
 アーポンはダストスの肩を叩き、元気付けようとする。そして皆に振り返って宣言した。
「そろそろ時間だ。皆行くぞ!」
 全員は気合の声を上げた。これからまた以前のような戦いが繰り広げられる事を覚悟で。
「ダストス兄は、行くのかい?一人じゃ危険だよ。私は、ダストス兄を失いたくない。」
 アップレはこっそり行こうとするダストスを引き止める。だが、その手は優しく払われた。
「戦わなきゃいけないんだ。彼らを騙した罪を償うためにも。私も戦わなきゃならないんだ。」
「生きて、帰ってきてくれる?約束して!」
 アップレがダストスの腕を掴む。
「・・・・・・・・・・。ごめん。」
 それを離し、ダストスは行ってしまった。
「ダストス兄!!」
 戦いは、それぞれの道に。悲しみを終らせるために。

※※
 ダストスは走った。プルーフのいる廃屋まで。自らの過ちを償うため。自らの選択が間違いの無い事を証明するため。彼は町長に脅されていた。姉の奇病を治すためにいる資金を目の前に。資金が欲しければ、石を取り戻せ。と。
 事の発端はアップレとフラジピルが父の悪行を止めるために、アップレは石版をフラジピルは石を奪って逃走した事から始まる。それで父が更生すると思っていたのだろう。が、それは違った。長年その石の力に触れたテュッティーはすでに人の心を失っていたのだ。二人を探し、石と石版を取り返すために、怪しい冒険者の力まで使ったのだ。アーポンのおかげでそれも止められたわけだが、しかし、ダストスに矛先が向った。
 プルーフの病を治したければ、石と石版を奪ってこい。そして、アップレとフラジピルを殺せ。それがダストスに課せられた命令。それに従う事は出来なかった。そこで、石版だけを持ち出して新たな石を発見した☆Tao☆の冒険者たちに接触を図ったのだ。石版を持っていたフラジピルを通して。
 優しいフラジピルがそれを断れるはずが無かった。フラジピルもプルーフに憧れを抱いており、それはよく懐いていた、そのプルーフを治すためならと、自ら汚名を着ることを厭わなかった。それが更にダストスの心を痛めた。自らの所業がどれだけ愚かなのか。
 しかし、ダストスは寸前で思い直した。プルーフの言葉。そして地下に閉じ込めた性欲をもてあます・メリシュランヅ(a16460)や盾の誓約・ヴェイド(a14867)の言葉や行動に触れ、自分の愚かさに気づかされた。
 だから戦うことにした。自らは戦えば気絶するとしても。最後まで自分の道を走る。そう、決めたから。
 廃屋には、テュッティーと黒いフードを被った男がいた。
 黒フードの男が言った。
「ようこそ。裏切り者。石版まで奪い、自分の私利私欲でしか動けない霊査士が、何のようですか?」
 テュッティーがその言葉にいかにも可笑しそうに笑った。足元には、ぐったりとしたプルーフが。ダスティスはそれを見るや相手が冒険者である事も忘れ、自分が霊査士である事も忘れ、飛び込んだ。姉さんを助けるために。しかし、その体はすぐに言う事を聞かなくなった。全身に鎖が巻きつく。テュッティーが放ったアビリティーだ。本来ならその後に麻痺を伴うのだが、テュッティーは平然として、笑った。楽しそうに。
「お前は何も出来ない。無力で醜い。貴様はそこで気絶する事無く、見ているがよい。貴様の守るべき者が、貴様の選択で死ぬ姿を!」
 テュッティーが言うと黒フードの男はフードを取り払った。中から現れたのは黒い鱗を纏ったリザードマン。その手にはレイピアが握られている。そして、真下に寝ているプルーフの腕に目掛けてその剣をつき立てた。
「あぅう!」
 プルーフの口から悲痛な叫びが聞こえる。ダストスは鎖に縛られたまま、何も出来ない。
「や、やめろーーーーーーー!!やめるんだ!!くそう!悪魔め!」
 ダストスが気絶寸前の意識を保ったまま叫ぶ。本来ならすでに意識を失う場面だが、感情の高ぶりか。その意識は保ったままだった。いや、気絶したほうが良かったのかもしれない。悲痛に苦しむプルーフを見なくてすむから。だが、ダストスは男の顔だ。守るべきも者を守るために戦う戦士の顔。
「ああああああああああ!うあああああああ!!!!」
 全身の力を振り絞る。彼を束縛していた鎖が音も無く千切れる。
「ほう!素晴らしい!」
 テュッティーが嬉しそうに呟く。ダストスはテュッティーを突き飛ばし、意識を失う寸前でプルーフの元へたどり着いた。
「へえ。なかなか霊査士ってのもやるもんだね。」
 興味なさそうにリザードマンの男がレイピアをダストスの腹部へつき立てた。
「っ!!!!」
 声もなく倒れるダストス。その腹部を押さえ、プルーフが最後の力を振り絞り、立ち上がる。
「この子を殺さない!殺させなどしません!殺すなら、私を殺しなさい!」
 両手を広げ、ダストスを守るように、たてもしない、普通に喋ることも叶わないプルーフが、悲痛な顔を、以前の美しい顔で言う。それは、天の神がいるなら、それを思い浮かべる。
 さすがのリザードマンも一時躊躇する。ダストスは姉の姿が光るのを見ながら意識を失った。
 そのダストスは、見た。桜が舞う木々の下を踊る妖精の姿。美しく光る一人の女性。にっこりとこちらに微笑むも、近づく事ができない。
「来てはいけません。ダストス。貴方には、やらなければならない事があるはずです。貴方の勇気があれば、貴方の優しさがあれば、必ず願いは叶う。信じて。自分の力を。私の大好きな弟。ダストス。貴方は強い。信じて。」
 妖精は言うと、輝く空へ昇って行った。黄金の雲。七色の虹。
「ねぇさん・・・・・・。」
 その日、失ってはならない命が、一つ。邪悪な力によって失われた。真っ赤な薔薇とともに、美しく散った。しかし、そこに失われし物のかわりに、大いなる勇気が。そこに誕生した。後に、最高の霊査士と呼ばれる、そのドリアッドを。
※※

【メリシュランヅ救出班】
 暗雲が立ち込める空には鳥も飛んでいない。雨でも降るのであろうか、雷が光っている。すっかり人気のいなくなった町の中を☆Tao☆の冒険者は潜む様に歩いている。仲間であるメリシュランヅが捕らわれている屋敷をヴェイドから聞き、その場所へと見張りを気にしながら行動していた。すでに時刻は町長の元へ向っている黒炎の狗・カナト(a00398)たちが行動を起こす時間が近い。
「・・・・・・・メリシュさん・・・・・待っててくださいね・・・。」
 平穏なる日常の担い手・マクセル(a18151)が呟く。普段ふざけていてその被害にあったとしても優しい彼女はメリシュランヅを気遣っている。仲間を思う心は普段のメリシュランヅの行為を通り越して、そこにある想い。
 心配しているのはメリシュランヅを救出に回った他の者も同じらしい。特に自分探しの旅をする者・ユイシィ(a29624)は自分の責任でメリシュランヅが連れ去られたと前回の竜脈坑道の事件より自らの行動を悔やんでいるようだ。
 出発前に蒼月鋼鉄鳳凰覚醒武人・シオン(a12390)に言われた言葉を思い出す。落ち着いて周りを見て、仲間を信じて己の力を信じて行動すれば良いのでござるよ。その言葉をもう一度自分に言い聞かせる。先頭を行く深緑の癒し手・ユウコ(a04800)の後ろにつき、皆の行動を見ながら行動している。
 その後ろではなぜか手にいっぱいウパを持っている天使見習い・ミュシャ(a18582)が楽しそうにウパを見つめている。
「みゅ、ミュシャ、それ何に使うの?」
 フラジピルはその横でちょっと恐々と見つめている。ミュシャはにっこり輝く笑顔で言い放った。
「メリシュおぢちゃんに食べてもらって栄養つけてもらうんだ!」
「「・・・・・・・・。」」
 全員は沈黙し、ウパは脅えていたと、フラジピルは後に語る。
「ここ、かな?」
 ユウコはヴェイドの持っていた地図の写しを見ながら位置を確認して頷く。
 ユウコはミュシャを入り口で待機して見張りなどが戻ってきたらここで止めるようにと指示する
「なるべく怪我させないようにしてねっ!」
 元気いっぱいのミュシャに言い聞かせるようにしてユウコが言う。
「はーい♪」
 これまた元気に返事を返す。三人とも少しだけ不安にかられながらもその屋敷へと入っていった。
 屋敷の中には待ち伏せも無く、見張りの姿も見当たらない。人気がまったく無いのだ。三人は屋敷の内部を慎重に調べて行く。ユイシィは細かく色々な場所を探索している。その行動には焦りなど微塵も感じない。以前から随分と成長している。その様子にユウコも安心してか、他の部屋を探索し始めた。
 地下へと続く扉を見つけたのはマクセルだった。
「この奥が怪しいですね。メリシュさんの匂いがします。」
「・・・・・・・。くさいんだ。ちゃんとお風呂入ってないからだね。」
「「・・・・・・。」」
 ちょっとした冗談が妙な噂になり、マクセルもユイシィも入浴してないメリシュランヅを思い浮かべる。ちょっと嫌だった。
 地下室の奥には頑丈そうな牢獄があった。そこには二人の人影が。

 物音が聞こえたのは気のせいではないようだ。昨日のダストスの食事配布からこれと言って口にしていないし、弱っているスケサンの食事を多めに取らせるために自分は殆ど何も食していない状態だ。が、何も食べていないよりはましだった。ダストスは今頃何をしているのだろうか。皆は本当に大丈夫なのだろうか。フラジピルは。
 そんな心配だけが心を支配している。音が聞こえた事で、ダストスでも戻ってきたのだろうかと想い、スケサンを起こす事にする。
「スケサン、食事配布かも知れんぞ?」
 警備員・スケサンは全身傷だらけの体だが、メリシュの応急処置のかいもあり、なんとか一命を取り留めていた。
「あんた、なにも食べてないんだろ?今日はあんたが食べてくれ。」
「そうは言うがなぁ、大佐。その状態をもてあます。元気になるには食べろ。」
「・・・・・・・。」
 スケサンはその言葉に突っ込もうにも体力が無く、仕方なく頷いた。
 その時である。目の前に一人の女神が光と共に現れた。
 その女神は両手にターバンを持っている。金と銀のターバン。メリシュランヅは目をこすり、さらにスケサンのほっぺたをつねる。夢ではないようだ。
「・・・・・メリシュさん、貴方の落したターバンはこの金のターバンですか?それとも銀のターバンですか?」
 光る女神はメリシュランヅにそう質問した。メリシュランヅはどちらも落とした記憶が無かった。そして、金のターバンは重そうだし、銀のターバンは噛むと歯が痛くなりそうだと思った。
「俺が落としたのは、普通のターバンです。」
 メリシュランヅは正直に答えた。すると、牢獄が音も無く空き放つ。
「正直者のメリシュさんには、これを差し上げましょう。」
 言うと、俺の口が自然に開く。いや、無理やり開かされている。
「あひほふふんは!(なにをするんだ!)」
 目の前にはもう一人、見た事のある女神が、いや、邪神が立つ。その手には大量のウパが。そして、それは生のまま俺の口へと流し込まれる。ぴちぴちと飛び跳ねるウパが俺の口へ。俺は息が出来なくなり、仕方なく飲み込んでいく。
 哀れウパ。メリシュランヅの口を通って胃に直通して行った。そして意識を失った。

 目覚めると、目の前にまだ女神がいる。寝ぼけているのだろうか。目をこすると、その女神はマクセルへと姿を変えた。
「あ、あれ?は!俺は!大量のウパが金のターバンに乗って邪神の力に口が開かれる!ウパ!ウパ!」
 必要以上に混乱したメリシュランヅがマクセルに抱きつく。が、その喉元に鋭い剣が。
 素敵な氷点下の笑みでユイシィがメリシュランヅを見つめる。
「今は遊んでる場合じゃありませんよ?」
 メリシュランヅはそれで意識を取り戻し、自分のターバンを頭に巻きつけた。とたんにしゃきっと立ち上がり、きりっとした顔になる。マクセルがメリシュランヅ用にと持ってきたサーベルをそっと差し出す。それを掴むと手に力が戻り、意味もわからないやる気で満たされた。メリシュランヅがその場で一回転すると、たちどころに鎧とマントと盾が装備された。
「ふっ・・・・・・。今の俺に敵は無し。」
 その説明できないほどの自信が満ち溢れている。ユウコはそれを無視してスケサンの手当てを、ユイシィは周囲の警戒を。そして、マクセルは手元に残ったウパを手に・・・・・・。
 もう一度メリシュランヅは宇宙を見ることになった。合掌。

 その屋敷の外ではミュシャが見張りが戻らないかどうかを、暇そうにつまらなそうに待っていた。しかし、見張りが戻ってきたらどうしようか考えていたのでちょっとは暇つぶしにもなったらしい。武器やアビリティーを使用してはならないとユウコから言われているから、ならばと考えて今しがた考え付いたのだ。
「・・・・・・・・( ̄ー ̄)ニヤリッ」
 そこに、黒いフードを被った男が現れた。その手にはレイピアが握られている。レイピアは血で濡れている。ミュシャはとっさに判断して距離をとった。そしておもむろに叫んだ。
「っきゃーーーーーーーっ!!」
 その叫びは紅蓮の咆哮奥義となり、目の前の男に脅威を与えるはずだった。
「ふん。餓鬼の遊びじゃあるまいし。こんな子供。ん?ツバサ。ほう。餓鬼、貴様エンジェルか?」
 まったく持ってどうじない男に驚愕しながらもその問いに更に紅蓮の咆哮奥義で答える。
「だったらなんだっていうのーーーーーーーーーーーーー!?」
 まるで言葉が衝撃になるようにあたりを振るわせる。が、男はまたしても平気そうな顔だ。ありえない話だ。しかし、感じ取っていた。敵が自分を遥かに上回っている事を。
「お前の血、その血が必要だ。それに、中に入ったやつら。ふふっ。」
 男はフードを脱ぎ去った。中からは黒い鱗に覆われたリザードマンの姿。プレストプレートに身をまとい、両の手にレイピアを持つ。翔剣士の戦闘スタイル。ミュシャはさらに距離をあける。狙いは自分。そして、この場所にも自分しかいない事実がある。下のほうはどうなっただろうか。もうすぐ戻っても良い頃。ミュシャは時間稼ぎの方法を考えている。
「くっくっく。脅えているのか?かわいそうに。すぐに楽にしてやるよ。」
 男が剣を構えてゆらゆらと動く。するとどうだろう。自分の心にある闘士が揺らいでいくのだ。何も戦うことはない。男に従えば良い。そう思えてくる。そして、目の前に幻影が見える。失った姉の姿。
「ネネお姉ちゃん・・・・・・・・。お姉ちゃん!!」
 幻影を見るミュシャが現実を見つめるために首を左右に振ろうとするが、自由が利かない。あれは自分の姉ではない。その事実が把握できない。敵の幻惑の剣舞の呪中に捕らわれている。
 そこへ、一筋の光が。みえた。姉が、そっちは駄目だと言っている。ミュシャはとっさに左へ飛んだ。
「ほう。意識的に避けるとは。だが、次は無い。」
 男は更に剣を揺らしながらミュシャに近づく。ミュシャは目をそらす事ができない。そこへ、現れた。
「や ら な い か!!!」
 意味不明な叫びと共にミュシャへ、ミュシャへ抱きついたのはメリシュランヅだった。そう、幻惑の剣舞を使うメリシュランヅにとってはそのアビリティーをとく方法も熟知している。強い精神的なショックを与えれば解除可能だと。
「うっきゃーーーーーーーーーーー!!!!」
 今までに無いほどの紅蓮の咆哮と剣の一振り。メリシュランヅは吹き飛ばされたが、ミュシャは自らを取り戻した。
「貴様、翔剣士か!」
 男は言うとメリシュランヅの方向を向いた。その間にユウコが毒消しの風奥義とヒーリングウェーブ奥義を使用する。ミュシャの束縛は完全にはがれ、メリシュランヅの怪我も治る。メリシュランヅは剣を構えると男の前に立ちはだかる。
 そこへユイシィとマクセルが合流する。
「無茶しちゃ駄目だよ?」
 ミュシャは辛そうな顔をしながらもメリシュランヅに声をかけた。
 メリシュランヅはユウコに頷き、ユウコは理解したようにミュシャを抱いて後方に下がる。マクセルとユイシィはすでに戦闘態勢に入っている。メリシュランヅは盾を握りなおし、敵を注意深く見る。敵は自分と同じ翔剣士のようだ。二刀流でさらに幻惑や薔薇の剣戟を得意とするようだ。その足の運びからメリシュランヅは直感で判断した。
 見ると、片方のレイピアには血がついている。ミュシャのものではない。そして、その剣先には桜の花びらが一枚だけ。自らの存在を示すかのように。そこでメリシュランヅの怒りが爆発した。
「貴様!ダストスをどうした!プルーフさんをどうした!!」
 徐々に距離をつめながら怒りに満ちた目で敵を見つめる。
「くっくっくっく。あの情けない兄弟ですか。薔薇と共に散ってもらいました。当然でしょう。私たちに逆らったのですから。貴方は少しは出来るようですね。後ろの二人も。さて、どうやって遊んであげましょうか。」
 メリシュランヅはマクセルに頷く。マクセルもそれに続く。ユイシィは二人の攻撃に追随するようだ。怒りに身を任せても流されない心。メリシュランヅは今、まさに本当の怒りで満ちていた。
「お前の命はここで散る!その鱗ともども五つに切り刻む!!」
 言うとマクセルはライトニングアロー奥義を敵に向かって放った。それと同時にメリシュランヅが一気に敵に近づく。ユイシィは走り、敵の背後へと走りこむ。
「簡単にはやられませんよ。」
 男はそういうと足を素早く動かす。ライトニングアロー奥義を寸前で避ける。
「ライクアフェザー!ユイシィさん、気をつけて!」
 マクセルは次の矢を放つ準備に入る。メリシュランヅは敵に向かって一直線に走りこむ。そして一瞬のうちにまるで分身しているかのように、疾風の突きを敵へ放つ。同時にユイシィが敵の背後から流水激奥義を放った。
 男はまるで当たるのに身を任せるようにその場を動かない。
 がしっという鈍い音と共に、両方の攻撃は確かに男の急所を捉えていたかに思われた。だが、メリシュランヅは自らの手に手ごたえがないのを感じ取る。敵の肉体は鎧並に強化される。いや、強化された。
「ば、ばかな!鎧進化だと!」
 攻撃を弾いたのは異形の形をした鎧だった。それは進化した鎧。アビリティーが施された鎧だった。
「ふふん。そうです。私がただの翔剣士だと甘く見てはいけませんよ。私はリザードマン。その鱗は鎧と同じくらいに鍛えられている。そして鎧進化の力。貴方たちの力ではもはやおもちゃ同然!」
「あ、貴方は何者なの!普通ではないその力、冒険者を上回るようなその力、貴方は誰!?」
 ユウコは敵に問うた。その質問はわかる。冒険者には限界がある。この敵はそれを遥かに上回っている。
「良いでしょう。冥土の土産に教えてあげましょう。私の名前はミュントスの黒薔薇・グリフィス。以後、お見知りおきを。」
 ミュントス。それは地獄にいる邪悪なる民の住む街。姦淫の都・ミュントス。ミュシャの姉を葬った無敵大帝・ザンギャバスがいた場所。ザンギャバスは滅ぼされ、地獄の軍勢は一時退いたが、その実態は不明であった。それが、ここで活動している。目的は・・・・・・・。
「お、お姉ちゃんの、お姉ちゃんの敵!」
 ミュシャは剣を構えて敵を見据えた。その目には涙が浮かんでいる。敵は自分の仇を打つ相手。憎き地獄の住民。
「ミュシャ!メリシュ!ミュシャを守って!」
 ユウコは後方からヒーリングウェーブを放つ準備をする。メリシュランヅはミュシャの隣に。その後ろにマクセルとユイシィが戻ってくる。
「もう一度だ。絶対に倒す!」
「もちろんだよ!」
 グリフィスは両手に剣を構え、不思議に揺らしだす。
「その攻撃はもう無駄よ!」
 すぐにユウコが毒消しの風を発動する。
「ちっ!忌々しい!貴方たち屑を相手にしているほど暇では無いのですよ!」
 今度は敵から仕掛けてきた。メリシュランヅとミュシャが左右に飛ぶ。その後ろでユイシィが流水激奥義を放つ。グリフィスはライクアフェザーの効果で上方に飛び上がりそれを避ける。そこへマクセルがライトニングアロー奥義を発動する。上空で動きがとれないグリフィスをしっかり捕らえる。グリフィスはそれでも鎧進化に守られ、ダメージはほとんど無い。そこへミュシャとメリシュランヅが左右から切り込む。メリシュランヅは薔薇の剣戟を放つ。敵の鱗の同じ場所を削るように打ち込んだ。
 敵の鎧進化の奥、鱗の更に奥へとその剣は達した。
「ぐふっ!ちぃ!翔剣士と翔剣士ではらちがあきませんね。それに多勢に無勢じゃありませんか。今日は厄日ですか。せっかく旨い血をすすったと言うのに、私の体に傷がついてしまいましたよ!」
 男は傷をかばうでもなく、更に剣を構える。その姿勢は普通の冒険者であれば素晴らしいのだが、敵はミュントス。しつこいだけである。
「そんなのんきな事を言っているのも今のうちです。今のメリシュさんは誰にも負けないんだから!」
 マクセルはいいながら更にライトニングアローを発動体制に入る。同時に四人が集結する。
「私は誇り高き、女帝・クラリィス様の7本槍の一本。貴様ら雑魚にやられるわけは無い!!」
 グリフィスは怪我をしているとは思えないスピードでこちらに近づく。
「チキンスピード!?アビの範囲を超えている!化け物か!!」
 電光石火の突きがメリシュランヅへ向い放たれる。スピードラッシュ奥義である。しかし、メリシュランヅは自らにもライクアフェザーを施していたため、なんとかかわすが脇腹に熱いものを感じる。
「くっ!」
「メリシュ!!」
 ユウコがすぐにヒーリングウェーブを放つ。それと同時に痛む体に鞭を打ってメリシュランヅは飛んだ。ミュシャもすぐに続く。ユイシィが先ほどと同じ様に流水激奥義を放つ。
 グリフィスはそれを避けない。またしても鎧進化で弾かれるが、心臓部を射抜く様にマクセルのライトニングアロー奥義が鎧ともども貫く。
「ぬうおお!!」
 グリフィスの口から大量の血がほとばしる。メリシュランヅはその部分だけを狙うかのように薔薇の剣戟奥義を打ち付ける。更に鎧は無力化し、硬い鱗の間から鮮血が噴出す。そこへミュシャが剣を突き出した。
「負けるものか!!」
 ミュシャへ最後の力を使い、グリフィスが剣をつきたてようとするが、そこへメリシュランヅがわって入る。メリシュランヅの肩に鋭い剣が突き刺さるが、ミュシャは無傷だ。ミュシャはメリシュランヅを見て、怒りの力を目前の敵へと突き出した。
「お姉ちゃん!私に力を貸して!!!!ネネお姉ちゃん!」
 それで勝負は決まっていた。深々と心臓を突きぬけ背中まで達した剣。それでもしばらくグリフィスは動いていた。壮絶な戦いの末、メリシュランヅたちは勝利を勝ち取った。
「メリシュお兄ちゃん!!」
 涙ながらに倒れこむメリシュランヅを抱えるミュシャ。すぐにマクセルとユウコが手当てに入る。ユイシィはグリフィスを見つめている。その口から出るはずのない声が。グリフィスの声。
「私を倒しても、後6人・・・・・。貴方たちの運命は決まっています。ふふ。たのしみです・・・・・・ね。」
 それだけ言うと、グリフィスは絶命した。
「貴方とは、普通の冒険者として会いたかった。」
 ユイシィはグリフィスの開いた目を閉じた。
「さあ、やすんで・・・・・いる場合じゃない!だ、ダストスが!」
 メリシュランヅは立ち上がった。その怪我は酷いのに。その目はダストスの心配だけであふれていた。そして、先に行ったフラジピル。その幼い少女の姿を思い浮かべる。
「やすんでいる場合じゃない!俺たちはまだやらなきゃならない事があるんだ!」
 四人は頷いた。そう。まだ終ってない。

【ヴェイドストーリー】
 アルビナークの街から少々離れた道の先に一軒の小屋。そこから大勢の人が出てくるのをヴェイドはその行く先で見ている。ヴェイドは己の戦いは、無謀な一般人の戦士たちの行為を止めるために単身そこへ赴いたのだ。彼らの出発時間を改め知っているとは言え、正直にその時間に出てくるか心配だったが、予定通りその時間にかれらは手に武器をもち、先頭に咥えタバコのアーポンに従い。
「町長は無力な一般人ではない様ですし、彼らを行かせては全滅もあるのでね・・・・。」
 ヴェイドはその軍勢を悔しい思いで見つめている。指導者であるアーポンや常識者と思われるアップレまでもがただの一般人に武装させ、あまつ冒険者である町長へ戦いを挑もう等、いかに自分たちが加勢した所でただの犬死にしかならない。それは無駄に住民を減らす結果となり、今後のアルビナークの存亡をも左右する事になる。それを判断できない人々に多少の怒りを覚えているようだ。
「人を欺くのは好きではありませんが、これで被害を減らせるならば。」
 ヴェイドは自らに鎧聖降臨を施し、道の真ん中に仁王立ちした。自らを町長の刺客として自らを偽ることで、反乱組織の一般人の戦意を喪失させれば、なんとか。そう考えたのだ。
 アーポンは目の前に立ちはだかる白く輝く鎧に顔、全身を包む姿を見た。
「・・・・・・・。誰だ?ありゃ・・・・・・。」
 アーポンたちはその前で立ち止まる。今のところ時間稼ぎには成功しそうだ。
「私は町長テュッティーから使わされた者。お前たちをこの場で仕留める様に言われている。覚悟をしてもらおう。」
 剣をアーポンへまっすぐ突き出し、ヴェイドはすぐに仕掛けた。こちらの本当の意思を悟られるとやり難い。
 アーポンはそれをすぐにかわす。勿論ヴェイドは手加減をして放ったのだ。一部の反乱組織の青年たちがヴェイドに向かって駆けた。
「や、やめろ!お前たちの敵う相手じゃねぇ!!」
 アーポンは叫ぶ。それと同時にヴェイドは手から粘り蜘蛛糸改を発動する。すると蜘蛛の糸が青年たちをがんじがらめに縛りつけ束縛する。しかし反乱組織の数は40。それだけでは全員の拘束が出来ない。ヴェイドは一般人が振るう武器の攻撃などかわすまでもなく、打たれるままにして粘り蜘蛛糸改を放ち、あっという間に全員が蜘蛛糸の餌食になってしまった。
「くっ・・・・・。こいつ、やるな!」
 アーポンが周りの全員が束縛されたのを見て剣を構えなおした。アップレは何故か見守っている。
「アップレ!何してんだ!お前は皆を解放しろ!!」
 しかしアップレは動かない。仕方なくアーポンはヴェイドに攻撃をしかける。武人であるアーポンは力任せにヴェイドの鎧へ巨大な斧を振り下ろす。まるで自らの体を捨てるような無謀な斧筋。ヴェイドは自分の剣の刃を反対にして切れないようにアーポンの腹部へ一撃を見舞う。
「ぬあ!」
 一瞬にして吹き飛ぶアーポンは自らの腹部に手を当てて嘔吐した。
「その程度でテュッティーに勝てると?無謀な。一般人すら巻き込んで、その程度の器で!」
 ヴェイドは流石に我慢できなくなって怒りを露にする。アーポンの手から離れた両手斧を軽々と持ち、アーポンに投げて渡した。
「来なさい。貴方の力はその程度じゃないはずです。自分の民を守るのでしょう?」
 ヴェイドは左手でアーポンを挑発した。まるで稽古をつける師範のように。
「ば、馬鹿にしやがって!俺は、俺にも譲れねぇもんがあるんだよ!!皆も同じ気持ちなんだよ!てめぇ見たいに力がある奴にはわからねぇだろうが、必死なんだよ!」
 アーポンは斧を構えなおしてその場でウェポンオーバーロードを発動した。アーポンの斧が真の力を発揮する。
「必死で生きてるから、戦うんだよ!力がねぇんじゃねえ!勇気だけで勝てねぇこと位知ってる!でもな、ダストスも戦ってるんだ!俺たちが戦わないでどうするんだ!俺たちは、譲れないものがあるんだ!アップレ!何してる!」
 アップレは祈るような姿で力を発動する。アーポンの真の力を持った斧にディバインチャージガ施される。神々しく輝く巨大な斧が全てを砕くかの様な錯覚を覚える。
 ヴェイドは両足を大地に改めて足を踏みつけた。そしてアーポンの攻撃を受け止める姿勢である。
「うおおおおおっ!!」
 アーポンはヴェイドへ電刃衝を打ち込む。強化された武器が光り輝き、刃に雷が宿る。空の雷雲から一筋の落雷が。それと同時にヴェイドの腹部へ思いっきり武器を叩きつける。
「くぅっ!!」
 ヴェイドはその衝撃に耐えながらも、地面につけた足がすべるように自分の体が後方へ吹き飛ばされる。しかし、ヴェイドは微動だにしないかのように立った。
「ば、馬鹿な!?」
 ヴェイドは剣を地面に突き立て、何事も無かったかのように剣をアーポンの方向につきつける。
「譲れない物なら私にもあります。貴方たちのしている事を正す。それが私の役目。」
「な、なに?」
「今の貴方では、何も出来はしない。この鎧に傷一つ付ける事が出来ぬのです。わかりますか?敵は更に強大である事を。」
 ヴェイドは事実を話し始めた。

「馬鹿な。信じられない!!」
「信じられぬなら私を排除して行く道もありますが。私はただでは沈みませんよ?」
 ヴェイドは言う。冷徹にまで思えるその言葉の奥には深い慈愛の心が見て取れる。アップレはヴェイドの前へ行き、片膝をついた。
「私たちには譲れない物があるんだ!フラジピルも戦ってる!それを見ているだけなんて嫌なんだ!お願いだ!私たちを連れて行って!!貴方はあの人たちの仲間でしょう?」
 アップレは初めから知っているような口調だ。
「知っていたのですね。貴女は。」
「解るわ。戦う時に騎士としての礼儀を果たす人が、父の元に下るとは思えない。」
 アーポンはそんな二人を見て自分もヴェイドの元に。
「悔しいが、あんたの言う通りみたいだな。俺のあの攻撃がまったく通用しないあんたより強い敵が俺たちの敵なんだな。確かにそれじゃあ犬死かも知れねえ。でもよ、それでも戦わなきゃいけないときがあるんだよ!わかるだろう!?大きな力に屈して、死ぬのを待つのは愚かなことだろう!?俺は、それにたえれねぇ!お願いだ!連れて行ってくれ!」
「フラジピルが、危ないの。きっと、今。父と戦ってる。心の中で。叫んでるのが聞こえるの!私は、フラジピルの姉。妹を助けたいの!お願い!」
 二人の瞳には全く迷いなどないようだった。蜘蛛糸から開放した町民たちさえも。その瞳は戦士の目。戦う事は何も生み出さないかもしれないが、ここに、生きるための力を感じる。それが間違えなのだろう。けど、そんなに尊い事はない。彼らは必死に生きようとしている。ヴェイドは感じたのだ。この人たちを守る事を。
「行きましょう。フラジピルさん達を助けに。私は、私はヴェイド。☆Tao☆の重騎士。」
 ヴェイドは言うと、アーポンの手をとり、立ち上がらせる。
「貴方達の力も必要でしょう。アーポンさん、貴方は立派な戦士だ。」
「あ、ありがとう・・・・・・・。ヴェイド。」
「フラジピル!今、お姉ちゃんが行くからね!」
 一行は町長邸へと歩みだした。生きるための行進。戦いに挑む、戦士たちの挽歌が聞こえる。

【町長邸】
 時は来た。カナトは曇った空の上に輝く日の光を元に時間を知る。行うは相棒の救出と支配者への鉄槌。不思議な石の導きが街に小さな波紋を呼び、そして大きな波となり町全体を食らい尽くそうとしている。これに立ち向かうは我等。どんな困難な状況だろうとも信じる心が希望を照らす事を疑わず。小さき仲間とともに悲しみを打ち払わんとする。幕は上がった、この道の先に見えるは赤き情熱か、黒き欲望か。それは神のみぞ知る…ただ願うは相棒の無事な姿。
 カナトの心境は穏やかではなかった。心優しい二人の娘を放って自らの欲望や力を求め、あらゆる手段を厭わないその父の非道を。その愚かなる行為を終らせるためにその場所へ立っている。一方のメリシュランヅ救出に向ったユウコたちを心配しながら。
 そんなカナトの肩をぽんと叩いて笑顔を見せたのはフラジピルだった。
「ふ、フラジピル!!な、なんでここへ!?」
 カナトは驚きと共にフラジピルを守るように自分の後ろへ置く。
「あ、え〜〜っと、ね、お父さんを止めに。私は、その為に来たんだ。」
 シオンが更に警戒するようにフラジピルの周囲を窺っている。その井出達は捜査一課と書かれた警察服を身に纏っている。それと同時に夢と戯れし木漏れ日の舞踏姫・リシェル(a10304)も同じ様に周囲を警戒する。
「とにかく、相手がいかに君のお父さんでも、今は違う!フラジピル、君は近づいちゃいけない!」
 カナトはフラジピルを背に諭す。シオンもそうでござるよ。と合いの手を入れる。自分たちの戦いの戦火に巻き込むのも父親の傷つく姿を見せるわけのも行かないのだ。フラジピルはその言葉に沈んだ顔をする。
「聞いて欲しいんだ。僕の本当の気持ちを。今でもお父さんが好きだって。それを伝えたいんだ。そうすれば、元に戻るでしょう?ねぇ!」
 その目は涙に濡れ、真っ赤になっている。ここまでの道中も涙を流しながら葛藤していたのだろう。自分の父の本来の姿と今の姿を。そして未来の姿を思ってじっとしていられるほどフラジピルは成熟していない。子供ゆえに、その気持ちの行き所をぶつける場所が欲しいのだ。父が大切な☆Tao☆の人たちを傷つける事。そして、☆Tao☆の人たちが、大好きな父を傷つける事。どちらも耐え難い事だった。これから起こる現実が、フラジピルを無茶な行動へ走らせた。
 電撃双尾・リモネアーデ(a05950)やリシェル、カナトはその言葉に、その涙に声を無くした。すでに小さいその体全身で未来を感じ取っているのだろう。
「フラジピル・・・・・・・・。」
 リモネアーデはそのフラジピルを抱き締めた。その体は震えていた。恐怖と、自分の力がない無力感に。
「信じて。きっとお父さんは僕たちが助けるから。だから、ここで待ってて欲しいんだ。」
 リシェルは目に涙を浮かべながら、自分のできる限りの事をしようと心に誓った。リモネアーデも私も頑張るからと言い、震える手を両手で暖かく守るように。
「おねぇちゃん・・・・・・・。僕は、泣かないって約束したのにね。駄目だな。涙が出るんだ。嬉しいの。悲しいの。解らない。けど、お父さんを助けれるのは、貴方たちしかいない。お願い。助けて。」
「ああ!!」
 カナトは力強く頷いた。リシェルとリモネアーデは少し離れた場所にフラジピルを誘導した。
「絶対に助けてやる!」
 捕まっているだろう相棒の姿を思い浮かべるカナト。フラジピルの涙。カナトは改めて拳を握りなおした。

「カクサンが警備所からこちらに走っていった証言がある。彼にどうしても聞きたい事があるので探させてもらう!」
 カナトとシオンは声も高らかに宣言して正面の門を蹴破る。そこにはすでにテュッティーが待ち構えていた。そしてそれと同時に彼の両手からどす黒い欲望のエゴが具現化したおぞましい鎖が二人を捕らえる。
「待ってましたよ。冒険者の諸君。私の石と石版は何処ですか?渡せば命だけは助けてあげましょう。」
 楽しそうに。嬉しそうに。口元は笑っている。正気の人間の笑みではなかった。何かに捕らわれ、心を犯された病んだ笑み。その笑は鎖を通して二人に伝わった。
「町長…話はフラジピルから聞いたよ。全く…あんたって人は!」
「ダストスさんから話を聞いたよ。自分のしてる事がどんな事か、分かってるの?フラジピルだって、アップレさんだって悲しんでる。昔みたいなやさしいお父さんに戻ってあげて!」
 カナトとリシェルが立て続けに言葉をぶつける。が、テュッティーの顔色は変わらない。
「ふふふふ。ふははははは!」
「な、何が可笑しいの!?」
 狂気の笑みにリモネアーデが耐えられず叫ぶ。
「私の崇高なる目的の前に、二人の小娘の存在など、屑同然。なぜその屑の心配をせねばならないのですか。それよりも、自分の心配をなさい。ふふふ。今から私が暗黒の炎で焼き尽くしてあげますから。」
 テュッティーの拳に闇の炎が宿り、今、覚醒する。高ぶる力を拳から。闇の炎が心から。覚醒。
「黒炎覚醒か!なら俺だって!」
 カナトの瞳に怒りがほとばしる。その内なるあらぶる魂が具現化し、カナトの全身を炎がまとい、今、覚醒する。
 リモネアーデがすぐにその鎖を剣で断ち切る。リシェルは距離をとる為にテュッティーの腕を無理やり掴むと思いっきり振り上げる。
「とんでけぇー!!」
 それと同時にリモネアーデがすぐに剣を見えない速度で横へ振る。すると、周囲の空気がその剣圧で押され、衝撃となった。ソニックウェーブは迷う事無く、飛ばされたテュッティーへ向う。そこへシオンが流水激奥義を重ねるように放つ。その流水に紅蓮の炎が纏いつく。カナトのブラックフレイムだ。
「いけぇ!!」
 気合と共にカナトが叫ぶ。激しい轟音と共に、全ての力がテュッティーへ間違いなく命中した。しかし、煙が消えたところにテュッティーの姿が無い。
「こっちですよ。」
 リモネアーデの後ろに無傷でテュッティーは立っていた。リモネアーデの体を鎖で束縛し、自分の体から炎がほとばしる。
「きゃああああっ!!」
「「リーデ!!」」
 悲痛な叫びに皆が反応する。シオンはすぐにテュッティーへ切りかかり、それにリシェルが続く。シオンは剣をテュッティーの頭の上に振り下ろし、リシェルは拳を腹に打ちつけた。つもりだった。全力だった。全く持って手加減などしていない。が、その拳は、剣は、その場から動かない。
「な、なんでござるか!?これは!!」
「う、動けない!?」
 鎧聖降臨の力に相違ない。邪竜導士でもある彼がその能力を使うとは予想外だったのだ。さらには、そのアビリティーを使用する限界を彼は超えている。なのに、それを行使するのだ。
「無力な己を恨むのですね。まずは、この娘の命を貰いましょうか。」
 リモネアーデの肉体を更なる闇の炎が巻きついていく。
「リーデ!!」
 リシェルがヒーリングウェーブでなんとかリモネアーデを回復させる。だが、肉体に至った炎のダメージを完全に癒す事ができない。リモネアーデの意識が失われ、ぐったりとする。それを見たシオンが我慢できなくなり、剣を振り上げて一気に降り抜く。達人の達する域。その剣は、全てを両断するかの如く。
 その切っ先はリモネアーデの鎖を引きちぎり、それと同時にリシェルがリモネアーデを助け出す。
「リーデ、大丈夫!?」
「え、えへへ・・・・・・・。ちょ、ちょっと痛かったよ。」
 口から血がにじんでいるが、それでも心配させまいと笑顔を浮かべる。
「もう、許さないんだから!!」
 リシェルがテュッティーの懐に入り、飛び上がった。そして頭をおもむろに掴むと力いっぱい投げ飛ばした。金剛投げ奥義である。流石に鎧で強化されても投げられる事には対処できないようだ。
 そこへカナトがブラックフレイムを打ち込み、苦しい中、リモネアーデがソニックウェーブを放つ。
「ぐふっ!」
 今度は手ごたえがあった。落ちてくるテュッティーをシオンが達人の一撃を見舞う。その刃は強化された鎧を打ち抜き、その内部へ到達する。
 はじけ飛ぶ血。そしてテュッティーは衝撃と共に壁へ打ち付けられる。壁の一部が強力な力に半壊する。
「ぐっ・・・・・・。ふ。ふっふっふっふ。ふはははは。良いですねぇ。この痛みを待ってましたよ。」
 テュッティーはそれでも笑っている。自分の腹部から大量に流れる血など、なんとも思っていないようだ。
「も、もう人間じゃないんだ。あいつ!」
「なら、休ませてやるでござる!」
 シオンの声と共にテュッティーが闇の鎖を四方へ放つ。リシェルはその間を潜り抜け、鎖もろとも掴んでデンジャラススィングでテュッティーを天井高く振り上げる。そこへシオンとリモネアーデが力を合わせて流水激とソニックウェーブを発動させる。後方からカナトがブラックフレイムを力いっぱいに叩き付けた。
「「「「いっけーーーーーー!!」」」」
 四人の力が一つとなり、テュッティーの体を捕らえた。確かな手ごたえがあった。テュッティーは壁に減り込んだまま身動きできない。その傷は冒険者だからこそまだ生きている状態である。
「ごふっ」
 その口から真っ黒な血が吹き出る。テュッティーはその時点で戦える状態ではなかった。
「ごめん。フラジピル。ちょっとやりすぎたかも知れないな。」
 カナトは疲れきった顔でそれだけ言った。そしてカナトは他の仲間に知らせる為に二階へ上がる。その途中でカクサンの死体を発見した。
「もう少し、助けるのが早ければ。ごめんな。」
悔しい思いで満たされる。とにかく今は合図を。カナトは涙と共に、空高くブラックフレイムを放った。

【アルビナーク中央】
 無事にメリシュランヅを救出したユウコたちと、反乱組織を説得したヴェイドは無事に合流を果たし、互いの無事を喜び合った。そこへ、腹部へ重傷を負ったダストスがやって来た。
「ダストス!!」
「ダストス兄!!」
 アーポンとアップレがすぐに手当てを施しに入る。ダストスは憔悴しながらも、その痛む体に鞭打ってここまではって着たのだろう。すでに全身擦り傷だらけである。
「無茶しすぎだよ。馬鹿!」
 アップレは泣きながらダストスに抱きついた。癒しの抱擁である。
「わ、私は、平気だよ。それより、リザードマンの男が!」
 メリシュランヅが立ち上がろうとするダストスの頭を優しく抑える。
「あいつは、俺たちが倒した。安心しろ。」
 メリシュランヅ本人もすでに満身創痍だが、それでも笑顔でダストスに告げる。確かに彼はダストスに投獄されてが、ダストスの本当の戦う姿にもう彼を信じているのだ。
「メリシュランヅさん・・・・・・・・。すみません。わ、私は・・・・・・。」
 メリシュランヅは首を横に振った。それ以上は言う必要ないと言う意思表示だ。その顔には笑顔が浮かんでいる。
 ヴェイドはダストスの無事に一安心し、互いの情報と状況を交換し合った。
「そっか。だったら、そろそろカナトから合図があるはずだね。フラジピルはカナトたちが守ってくれてる。大丈夫だよ。」
 ユウコはアップレの手を掴みながら安心させるように言う。
「とりあえず、カナトさんたちと合流しましょう。」
 全員は立ち上がり、町長邸へ向った。その時、天に紅蓮の炎が上がった。
「どうやら終ったようですね。」
 マクセルはメリシュランヅの体を支えながら笑顔で言った。

【邪悪なる力】
「お父さん・・・・・・・・。」
 フラジピルは涙ながらに変わり果てた姿の父親の手を握っている。まだ息はあるが、その出血からそう長くは無い事をアップレは悟った。二人は涙ながらにも、自分の気持ちを父に告げた。
「お父さん。僕は、お父さんがどうなっても、お父さんが好きだった。今でも、大好きだよ。だから、声を聞かせて。」
 フラジピルは父の腕にすがりながら泣いている。すでに枯れているはずの涙が、また溢れ出しているのだろう。
 ☆Tao☆の全員、アーポンたちもその姿に涙を流した。
 その口は動くはず無かった。声がでる状態じゃ無かった。しかし。
「ふ、ふふふふふ。匂いがする。私の求めている力。石。そこか。」
 動くはずの無い手が炎をまとってフラジピルを掴もうとする。寸前でそれをミュシャが助ける。アップレも危険を感じたのか、後退した。
「くく・・・・・・・。今こそ、私の力を。」
 瞳の奥に炎が燃え上がる。あらぶる魂が今一度テュッティーを立ち上がらせる力となる。肉体を凌駕する魂は、更なる力を伴って。テュッティーを包み込む。屋敷全体に暗黒の炎が広がる。
「いけない!皆逃げましょう!!」
 ユウコの合図と共に皆が屋敷の外へ逃げ出す。屋敷が大きな音を立てながら崩れ去る。その奥に、見た事もない巨大な異形な怪物が立っていた。すでに、人外の声を出す。
「お父さん!お父さん!!!」
 フラジピルが父に走りよろうとするのをメリシュランヅが抱きかかえるように制する。
「離して!お父さんが苦しんでるんだよ!!ああ!!お父さん!!」
 変体したテュッティーが大きくうなり声を上げる。それと同時に周囲の空気が震える。
「ぐ、紅蓮の咆哮!?」
 マクセルが何とかフラジピルの耳を塞ぐが、肌を通して全身から音が伝わる。
「お父さんを、好きなんだ。守ってあげて。ターバンのお兄ちゃん。助けて。」
 メリシュランヅはまだ無事な反乱組織のメンバーにフラジピルを運ばせる。そして、もう立つ事も辛いその体で、剣を構えた。
「貴様は冒険者の誓いを忘れ、魔物になったのではない!美しい心を持った自分の娘たちを傷つけたから魔物になったんだ!あんたは、この俺が倒す!!」
 メリシュランヅの声と共に、力を使い果たした皆も立ち上がる。カナトがその相棒の隣へ立つ。
「俺がじゃなくって、俺たち。だろ?かっこいい所だけ持ってかさないよ。」
 ユウコが皆に力の限りヒーリングウェーブを放ちながら言った。
「あれはフラジピルの父親でも、町長でもない!あれは、倒すべき敵!悲しみはここで終らせましょう!それから思い出を作れば良い!闇の炎は、光の力で。私たちの道を、邪魔させはしない!」
 その声で全員に力が戻ってきた。不思議と、目の前の強大な敵に打ち勝つ力がわいて出てくるような感覚。
 ユウコが力を使いすぎてその場に崩れるが、笑顔のままである。それをアップレが支える。アップレは涙を拭いて目の前にいる敵に向かって言った。
「そうだ!私たちは戦う!お父さんを取り戻すには、それしかないんだ!あんたを倒す!!」
 アーポンが、アップレが、ダストスが。
 ユウコが、ヴェイドが、カナトが、メリシュランヅが。
 シオンが、ユイシィが、マクセルが。
 リシェルが、ミュシャが、リモネアーデが。
 立ち上がった。自らの道を示す光となる。
 魔物が大きな咆哮を上げると共に、戦いは始まった。

 壮絶な戦いが目の前で繰り広げられているのを、ダストスは気絶する事無く見ていた。重傷の腹部を気にもせず、その戦いを最後まで見届けるのが自らの務めと感じて。
「姉さん。私は、間違っていなかった。姉さん。私もまた歩みだして良いだろう?道を見つけたんだ。彼らの力となって、彼らを助ける事。それが、私の運命だった。これは、偶然の出会いなんかじゃない。だって、彼らのおかげで私は自分の道を見つける事が出来たんだ。姉さん。私は間違ってないよね。」
 最後の紅蓮の咆哮を叫ぶ怪物。その断末魔はアルビナークを包んだ。
 そして、轟音と共に、その怪物はその場所へ崩れ落ちる。その肉体は蒸発するように消失し、元のテュッティーへと戻って行った。
「お父さん・・・・・・・。」
 全身傷だらけのアップレがそれでも父の亡骸へ近づいた。すると、テュッティーの手が、自分の娘の顔へ伸びる。
「あ・・・・・・・ぷれ・・・・・・・。は・・・・やく・・・・・殺せ!」
「お、お父さん!」
「殺せ!頼む!・・・・・・・。私はすでに、人の力を捨て、魔族に力をかしてしまった。またお前を傷つけてしまう。その前に早く!!」
 テュッティーの顔色が以前のそれに戻った。しかし、その瞳の奥深くには尋常ならざる光が宿っていた。
「お父さん、私は、もう、お父さんを傷つけたくない!苦しむ顔を見たくない!」
 アップレが涙を流しならら父の顔を撫でる。その父の口元が苦しみの形に歪む。
「は・・・・・・・やく!殺せ!!ぐあ、ああ!!」
 その腕がアップレの腹部へ向って炎を宿して振り上げられる。それをアーポンがアップレを抱きかかえて跳んだ。
「父さん!!」
 アップレは肉体をほぼ失いながらも立ち上がるものを見つめて言った。それはもう、形すら。
「殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。」
 繰り返す。声が体全身に脅威を与える。その塊は炎を宿しながらまたもやその力を振り放つ。
 全員すでに動ける状態じゃ無かった。アビリティーなどすでに使い果たし、全員重傷に近い状態であった。暗黒の炎は幾重にも重なり、全員に降り注ぐ直前だった。皆は目を閉じてもう駄目かと感じていた。
 メリシュランヅは目を見開いた。桜が、舞っていた。空を。暗雲立ち込める空に、桜が。
 それを防いだのは、ダストスだった。
「諦めちゃ駄目だ!ここで諦めちゃ!君たちに託したんだ!立って!立ってあの魔物を倒すんだ!!」
 その声が、今ひとたび、メリシュランヅに力をもたらす。アップレも立ち上がった。心の中にフラジピルの声が木霊した。
「お父さんを、助けて!」
 メリシュランヅが動かない左手で剣を持ち、それを支えるようにアップレが持つ。
「もう、動けない。けど、不思議と、後一回だけ、動けるんだ。あいつを見ているからかな。あいつは勇者だ。ダストスは、最高の霊査士。あいつの気持ちを、フラジピルの願いを。君が、止めを刺してくれ。」
「はい。もう、迷わない。教えてくれた。貴方たちが、ダストスが、愛しいフラジピルが。大好きなお父さんが。だから、あの魔物を倒す!!」
「「うあああああああああ!!」」
 二人の絶叫は力となり、目の前の魔物の肉体の中央を深く貫いた。剣が突き刺さり、その魔物は全部消滅したのだった。
 ダストスはそこで崩れ落ちた。しかし、生きている。重傷だが、その顔には満足そうな笑顔が。
 空の雲が晴れている。
 綺麗な虹が空にかかっていた。


 アルビナークは元気な子供たちや、威勢の良い声の出店などが並び、崩れた屋敷を修復する工事の音が響いていた。
 元町長邸の前ではアップレとアーポンが目の前で燃える炎を見つめている。そして、ダストスとフラジピルの姿が。フラジピルはその手に大きな剣を持っていた。あの戦いの後、自らの力のなさに、そして何も出来ない無力感に行き場を失っていた。が、気を失っている間に見ていた。姉の戦う姿を。自らの道を切り開く、美しい姿を。だから、フラジピルも戦う事にした。争いの中に身を投じる事がどれだけ危険な事は承知している。けれど、何処かで今日も悲しんでいる人がいる。その人を助け、自分と同じ悲しみを繰り返さないようにするには、今の自分じゃ力がなかった。
 希望のグリモアの前で、姉のアップレと共に、フラジピルは狂戦士としての道を歩む事を決意した。それは同じ歳で姉を失っても毅然と戦う少女。ミュシャの影響が大きい。戦い終わった後でも、ミュシャは笑顔を失わず、フラジピルのお見舞いにお菓子を持ってきてくれた。あの時の顔が忘れられなかった。そして、フラジピルは泣かない事を改めて誓った。悲しい戦いで涙を流したくないから。流すなら、嬉しい時に。それが少女の誓い。少女が歩むと決めた道。
「行くのですね?フラジピル。」
 ダストスは歩き始めたフラジピルに背中越しに語りかけた。それをアーポンとアップレが追う。
「僕、決めたんだ。あの人たちのように強くなって、一人でも多く、嬉しい涙を流せる世界を築くんだって。だから、止まってられないんだ。行くよ。ダストスお兄ちゃん。」
 ダストスは随分とたくましくなったフラジピルを温かい目で見つめた。
「きっと、また会えるよね。僕は、彼らの力になるよ。それが、僕の歩む道。フラジピルと同じ、戦うことで嬉しい涙を流せる世界にするために。」
 フラジピルは笑顔で振り返った。
「うん。僕もあの人たちの為にも戦うんだ。きっと沢山の困難が待っている。それを、少しでも助けるために。」
「最果て山脈の近くにある石の情報が手に入ったんだ。そこでは多くのアンデットが徘徊しているらしい。きっと、例の石に関係していると思うんだ。その情報を探りに行くよ。」
 アップレがダストスに言った。
「解った。この石は私が彼らに渡すよ。この、紅い石は。」
「クドモスの町長が持ってた石だ。石は7つ。後5つある。それが揃った時に何があるかわからないが、その石の力で苦しむ人がいる。それは放っては置けないからな。」
 アーポンが笑顔で答える。そして、三人は歩いていった。自らの道を。迷う事無く。
「行ってらっしゃい。」
 ダストスも笑顔で見送った。☆Tao☆で眠っている全員の姿を思い浮かべながら。


 ドリアッドの森の近く。竜脈坑道の周辺にあり、平和を取り戻した希望の街アルビナークの北北西にある☆Tao☆旅団は、今日も静かだ。戦い終わって疲れ果てた体を休めるために皆すっかり眠りに入っている。
 その中で起きている者が。ユウコとメリシュランヅとカナトとヴェイド、そしてダストスだった。三人ともまだ傷が癒えていないが、目の前にある石版と、そこにはめ込まれた二つの石に注がれていた。
「あの邪悪な光を放っていた紅い石に全く力を感じません。それに、翠の石からも。これだけでは意味を成さないようですね。」
 ダストスはその石版に手を当てて霊査している。すでにフラジピルたちが次の石を求めて旅立った事は告げている。
「そうか。後5つ。アーポンの情報が確かなら、それが手に入れば4つか。先は長いな。」
 メリシュランヅが腕を組んで考え込んでいる。旅立った三人の安否も気にかかっているのだ。
「皆の傷が癒えたら行って見るのが良いでしょうね。どちらにせよ、一度関わってしまった事件ですし、アンデットを野放しにしておくわけにもいけませんからね。」
 ヴェイドが新たなる戦いがある事を胸に、そう言った。
「でも、今は、もうしばらく寝かしておこうよ。今はそれが勤めさ。」
 カナトが言う。
「そうだね。起きたらお腹すいてるだろうし、いっぱい作っておかなきゃ。三人とも、疲れてるだろうけど、もうひと頑張りだよ!」
 ユウコがそういうと、皆は笑顔で頷いた。
 そして、また明るい声が木霊する。
 平和を好む、優しい冒険者たちの集う旅団に、笑顔は絶える事はない。

第二話:牢獄の中のメリシュランヅ・完。


マスター:メリシュランヅ背後
参加者:9人+NPC5人(フラジピル・メリシュランヅ・アーポン・アップレ・ダストス)

冒険結果:成功!!
重傷者:桜ドリアッドの霊査士・ダストス/擬似NPC・フラジピル
死亡者:アルビナーク町長・テュッティー

全体入手アイテム:七つの窪みがある石版・紅く光る真円の石
石の数:2個(紅・翠)まだその実態は明らかではない。
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